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NFL 夢のある話
2010年12月01日
MINNESOTA VIKINGSのヘッドコーチ・チルドレス氏が成績不振を理由にクビになってしまいました。私の目の前に座っているコーチが昨年までVIKINGSのアシスタントをしていたので、氏の話はよく聞いていました。
「彼は本当にいいコーチだけど、少し変わっているんだよ。だから球団内でもよく思ってない人が多かったりする。つまり結果がでているうちはいいけど、成績が悪くなり始めたら危ないと思う」
数日前に、その言葉が現実になってしまったわけです。
余談はさておき、そのVIKINGSにGREG CAMARILLOという選手がいます。彼はSTANFORD大学から車で5分の高校を卒業して、STANFORDに入学してきました。父親はSTANFORD大学で教授をしています。高校での成績がトップクラスだった彼は、地元であり父親の職場でもあるSTANFORD大学を進学先に選びました。そしてフットボール部の門を叩きました。……「門を叩いた」と表現したのには理由があります。そう、彼は奨学金のオファーを受けて入部してきた多くの選手とは違い、自ら入部してきた「WALK ON」の選手だったのです。WALK ONで入部してきた選手がレギュラーとして試合に出られる確率はかなり低い。ましてや、その選手がNFL入りして活躍する確率なんて、天文学的数字と言えるでしょう。
彼と一緒にプレイしていた私の同僚に尋ねたところ、
「He was a walk on punter with good hands and speed.」
という答えがかえってきました。要は大した選手ではなかったようです。大学の3年生からやっとレシーバーとして出場できるようになりました。卒業後、NFLへの夢を捨てきれず、NFLのスカウト達が他の選手を目当てに来たトライアウトに参加し、スピードとクイックネスがあることだけは認められました。その後、運よくSAN DIEGO CHARGERSのスプリングキャンプに参加することになり、そこでレシーバーコーチをしていたJAMES LOFTON(元NFLの名WR。STANFORD卒)の目に留まりました。JAMES LOFTON自身も、大学3年生ぐらいまではただ足の速いだけのレシーバーだったそうで、実際、陸上の幅跳びで全米チャンピオンになったそうです。そしてGREGは4年生の時にBILL WALSHに出会ってレシーバーとしての才能を開花させ、ドラフト1位でNFLへ。JAMES LOFTONは、(特に期待もされず)春のキャンプに来たGREGを見て、
「大学時代の自分を見るようだった」
と言ったそうです。同じ大学出身というのもあったのでしょうか、GREGを熱心に指導したそうです。するとメキメキと腕を上げ、PRACTICE SQUAD(練習のようなもの)としてチームに生き残りました。その後、契約や解雇を繰り返して2007年にMIAMI DOLPHINSと正式契約にこぎつけました。そして、彼のキャリア初のNFLの試合、しかもオーバータイム(延長戦)に64ydのタッチダウンパスをキャッチして衝撃的なデビューを果たしたのです。その後2年間DOLPHINSで不動のエースとして活躍し、2008年11月23日には3年6億円で契約を延長。が……その3日後、試合で前十字靭帯を断絶、2009年のシーズンを棒に振りました。そして、今シーズン序盤にVIKINGSへトレードされたわけですが、それなりの年俸をキープしつつ、それなりの活躍をしています。
さて、WALK ONプレイヤーがNFLプレイヤーとして活躍するというこのサクセストーリーには、それを裏付ける面白い話があります。なんとこのGREG CAMARILLO選手は大学時代に一度もTDを記録していません。NFLにいるほとんどの選手が大学時代から大活躍しているスター選手です。当然、彼らは記憶ばかりでなく多くの記録も残しています。そんな中で、彼が2007年にDOLPHINSでのデビュー戦で記録したタッチダウンは、高校以来のタッチダウンだったことになります。
こんな話を聞くと、「夢をあきらめること」はばかばかしくなりますね。
ではまた。
TK