TKこと河田 剛のUSA情報

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2010年09月

2010年09月28日

NOTRE DAMEとの試合

勝ちました

 

ディフェンスが控えメンバーが出場するまでは、フィールドゴール2つに抑える堅守で、数字よりも圧勝という感じでした。オフェンスが攻め切れないものの、キッカーが5本中5本のフィールドゴールを成功(スクールレコード)させ、着実にポイントを重ねました。チームにとっても私にとっても特別な勝利となりました。
 
この勝利で全米ランキングも9位(AP)と上昇、次は全米5位のオレゴン大学とのアウェイゲームです。オレゴンは素晴らしいアスリートの集団で、ここまでの4試合もすべて大勝をおさめています。全勝同士、しかも同じカンファレンス内での戦いですので、もちろん全米生中継。当日はESPNカレッジフットボールの名物イベントがスタジアムで行われる予定です。
 
個人的には、強いチームと戦うのが楽しみでしかたありません。チーム全体もそのような雰囲気ですし、それを感じるたびに、チーとしての成長を感じています。
 
日本は、暑くなったり寒くなったり、たいへんみたいですね。皆様、ご自愛くださいませ。

 

TK

 

2010年09月27日

ジェレマイア

今年の春にOREGON大学の紹介をしたときに少し触れましたが、昨年のPAC-10チャンピオンであるOREGON大学のエースQBの名前を掲題しました。春はそのジェレマイア・マソリ選手が窃盗で逮捕されて、チームから1年間の出場停止を言い渡されたことを紹介しましたが、その彼が6月初旬にまたも逮捕をされました。容疑はマリファナの吸引と交通違反だったようです。それが発覚してすぐに彼はチームからキックアウト(追い出される、クビになること)されました。本当に素晴らしいアスリートでありQBなんですが、更生には至らなかったようです。

 

そんな彼が、シーズン開幕に向けてまたひと騒動を起こしました。理由の詳細はよくわかりませんが、オレゴンをキックアウトされたジェレマイアがなぜかミシシッピ大学(通称Ole Miss)に転向して、スターティングQBになろうとしているではありませんか……!? アメリカの大学スポーツを統括するNCAAは一度は否定をしましたが、ミシシッピ大学側のアピールによって、一転それを許可しました。アピールの詳細は割愛しますが、こちらでは「うまくルールの隙間をついた」というような言い方をされています。

 

Ole Missと言えば、映画「BLIND SIDE」でも有名になった名門校です。イーライ・マニングやデュース・マカリスター選手等もこの学校のOBです。しかし、ここ最近は不振が続いています。その起死回生を狙ったのか?とか、そこまでして勝ちたいか?とか、メディアでは叩かれていますが、こちらではよくあることのようです。カレッジフットボールにおいて、勝つこと(いい成績をおさめること)は直接大学の収入につながってきます。だからこそ、優秀なコーチの獲得や選手の獲得(高校生のリクルーティング)にお金をかけるのです。今のところ、彼の加入による劇的な効果は現れていないようですが、このようなケースはこれからも目にするのだろうと思っています。

 

「勝つためなら、なんでもありなのか?」 

私の中で、その疑問に対する答えが、(日本でコーチをしていた時と比較して)少し変わってきたような気がする今日この頃です。

 

TK

 

2010年09月25日

NOTRE DAME大学

遠征でNOTRE DAME大学に来ています。

 

我々STANFORD大学は西海岸にありますので、インディアナ州にあるNOTRE DAMEとは3時間の時差があります。そのため、普通の遠征の際には(現地に)金曜日入るのを、体を(時間に)慣らすために木曜日から入ります。金曜日は敵地のスタジアムで軽くウォークスルーのみで、試合に備えます。

 

ご存知の方も多いと思いますが、フットボール発祥の地であるアメリカにおいても、ここNOTRE DAMEは特別な存在です。強くても弱くても、常に注目を浴びていますし、ファンの数も高校生のリクルーティングにおいても、常に全米のトップクラスです。特に地域との結びつきが非常に高いカレッジフットボールにおいて、全米各地にファンがいることで有名です。

 

聞くところによると、飛行機を利用してフットボールの試合に訪れるファンが最も多い学校だそうです。最も多いというよりは、そんな学校はNOTRE DAME以外に存在しないんだと思います。その証拠に、私たちの宿泊しているホテルのパンフレットが今ここにありますが、なんと……
 FOOTBALL WEEKEND SPECIAL!!
 1泊450ドル~,AT LEAST 2 NIGHTS
要は、2泊以上しか受け付けません=料金は9万円~です。ここは少しいいホテルですが、この周辺のホテルはすべて同じような料金だそうです。信じられませんね。

 

その他、NOTRE DAMEファンのお金持ちは、学校の周りにフットボールシーズンのためだけに家を持っていたりするそうです。そして、シーズン中は週末だけ、ここサウスベンドを訪れて観戦を楽しむそうです。実際に、私の同僚の家族の友達でそのような人がいたので、昨日その家にお邪魔してきました。家の中すべてがファイティング・アイリッシュ(NOTRE DAME大学のニックネーム)一色で、ある意味クレイジーな感じでした。

 

さて、そんなクレイジーなファンを持つ、私たちにとっても特別なNOTRE DAME大学との試合でありますが、やることは特に変わりません。
「DO WHAT WE DO!!」
自分たちが練習してきたことをやるだけです。とはいえ、81,000人のアウェイゲームですので、それに対する対策は必要ですが……良い報告ができるように、がんばります。

 

TK

 

2010年09月17日

寄付

アメリカという国は、
国土が日本の25倍
人口が日本の2.4倍
GDPが日本の約3倍

 

数字は数字でしかありませんが、実感値としてひと言。

 

ご存知の方もいるかと思いますが、アメリカには信じられないような金持ちが大勢います。シリコンバレーの中心という土地柄もあるかもしれませんが、(日本では)到底信じられないようなストーリーを多く耳にします。

 

彼らのお金の使い道のひとつが「寄付」です。(日本に比べて寄付をすると優遇される)税制の違いと言ってしまえばそれまでですが、彼らは学校や福祉をはじめとした公共性の高いもの、そして自分の出身校等の自分や家族と関係が深いところに莫大な寄付をします。日本でももう一般的になった「ネーミング・ライツ」のように、寄付によってスタジアムやビル等にその人の名前がついたりします。

 

STANFORD大学は世界で一番寄付金が多い学校だそうです。グーグルやヒューレット・パッカード、ヤフー等、STANFORD大学の学生が起業した会社も多いですし、政治家や投資家、スポーツ選手に至るまで、多種多様なお金持ちのOBから桁違いの寄付が寄せられているそうです。

 

それを物語るストーリーがあります。以前、日本の(誰もが知るような)大企業が、STANFORDに数億円を寄付したそうです。日本の企業側は、STANFORDからどれだけのお偉いさんが出てきて、どのような接待を受けられるのかを(口には出さないまでも)期待していたそうです。しかし、会合に出てきたのは、数十もあるうちの一つの学部長で、軽く「ありがとう、これからもよろしく」ぐらいのことを言われてごく簡単に終わってしまったそうです。その態度と話の内容から、「それぐらいの寄付は、いつも、しかも個人レベルからもらっているから」という言葉がにじみ出ていたそうです。

 

最近、(私が)驚いた寄付の話があります。皆さん、フィル・ナイト氏をご存知でしょうか。言わずと知れたNIKEの創業者であります。STANFORD大学卒でNIKE社を設立し、巨万の富を得た彼が、2年前にSTANFORD大学の ビジネススクール拡大とそのビル新築のために150億円を寄付しました。現在、建設工事が進んでいますが、広大な土地に華やかなビルができあがりつつあります。

 

その他にも、キャンパス内はスポンサー(お金を出した人や企業)の名前がついた建物ばかりです。日本も、スポーツや教育に関しての寄付を(アメリカと同じぐらい)優遇する税制ができあがったらいいですね。

 

ではまた。
TK

 

2010年09月16日

二足の草鞋(わらじ)

さて、この前、バイキングスと契約したとお話ししたTOBY GERHARTですが、野球で活躍していたことでも有名です。

 

こちらの大学野球は春先から夏にかけて行われますが、彼はフットボールの最終年を迎える前の記者会見で、「メジャーリーグから高い順位で指名されたら、そちらを選びたい」 という意味の言葉を発して私たちをひやっとさせました。結局、メジャーリーグのドラフト前に、フットボールを選ぶと発表したため指名はされませんでしたが、野球の名門STANFORDで常にクリーンアップを打つようなすばらしい選手でした。

 

アメリカでは子供の時からシーズンによって(自分の好きな)スポーツをプレイします。もちろん、途中でやめてしまったり、スポーツが得意でないためにすべてのスポーツを諦めてしまうケースもあるでしょうが、いろいろなスポーツを経験しながら、それぞれのスポーツの動きを他のスポーツに生かしながら、アスリートとして成長していくわけです。


大学でいくつものスポーツをやっている選手はよほどのアスリートですが、こちらでは(レベルを問わなければ)珍しいことではありません。たとえば、昨年リターナーでALL AMERICANのセカンドチームに選ばれた、我がSTANFORDのWR、クリス・オウス選手は、高校時代に100mを10秒35で走ったそうです。ある日、学校の廊下を歩いていたら、陸上部のコーチに「大会に出てくれないか」と言われたの がきっかけだと聞きましたが、わずか10日足らずの練習でこの記録だったそうです。クリス曰く「誰にも邪魔されないでまっすぐ走るなんて、こんなに簡単なことはない!」。


まぁ、おっしゃるとおりなんですけど。日本でも、そんなシステムができるといいですね。オリンピックのメダルも増えるのではないでしょうか。

 

TK

 

2010年09月15日

開幕&UCLA戦

2010シーズンが開幕しました。

 

初戦はSACRAMENT STATEという、DIVISION-1 AA、日本で言うなら2部のチームと対戦。大勝で終わりましたが、いろいろと課題の残る試合でもありました。

 

続いては、名門UCLAのホーム「ROSE BOWL STADIUM」に乗り込んでの大一番。10万人のブーイングやクラウドノイズとも戦わなければなりません。日本では考えられないことですが、試合中に隣の人の会話ができないぐらいの時があります。そのために、ホームのスタジアムで大音量の音楽を鳴らしっぱなしで練習しました。


結果は、35対0で勝利。アウェイでのUCLAへの勝利は、15年ぶり。アウェイでの完封ゲームは実に30年ぶりだぞうです。 ゲーム内容と言えば、ディフェンスが要所を締めて、オフェンスがTDは取れなくてもフィールドゴールで加点するという展開でした。ハイズマン候補のANDREWは、パス成功率は低かったものの、要所で素晴らしいパスとスクランブルを決めて、勝利に貢献しました。

 

クラウドノイズとの戦いについては、人数はそうでもありませんでした。UCLAはSTANFORDと同じ学期制を取っているので、学生が夏休みから戻ってきていないんです。私が今まで体験してきたUCLAは10月以降だったため、学生と地元のファンが相まって満員のブーイングを浴びていたのですが、今回は少し軽めでした。とはいえ、5万人を超す歓声は、十二分に邪魔になりました(笑)。我々が所属するPAC-10のチャンピオンは2011年1月1日にROSE BOWLに出場することになるので、「ここに戻ってくるぞ!」という、いい動機づけの試合となりました。


ところで、UCLAは(高校生の)リクルーティングでは常に全米のトップクラスをキープしています。成績不振なのに、どうして高校生が全米から集まってくるかのか?想像の域を出ませんし、いくつも要因があるのでしょうが、一番大きいのは環境であると思います。リクルートする際、(当然と言えば当然ですが)必ず両親や家族を伴って訪問してくる高校生に キャンパスやスタジアムを案内します。そこで高校生やその家族の心をがっちり掴んでいるのでしょう。キャンパスはビバリーヒルズに程ほど近いWEST WOODというきれいな街の一画を占めています治安の安定しないLOS ANGELSの中では比較的治安もよく、ヤシの木やゴルフ場等、緑の多い素晴らしい環境にあります。その上、キャンパスから少し離れた「ROSE BOWL STADIUM」に連れて行かれて、見たこともないような10万人収容の大きなスタジアムと、芝生の多いこの国の中にあっても見たことのないようなきれいに手入れされた芝生を見せられるわけです。生徒はもちろん、両親や家族にとっても、環境のよさは学校を選ぶ大きな要因になります。特にこの国において男子が物事を決める際には、「ママ」の意思がそれを大きく左右します。 私もリクルーティングの手伝いをする中で、何度も「ママと相談する」とか「ママが決めたから」 という話を聞いたことがあります。したがって、こちら側も、母親をいかに大事に扱うかを考えます。たとえば、キャンパスツアーやキャンパス内のショッピングセンターへの案内、ディナー等も、基本的には母親にいかに好印象を与えるかが大事なんです。


今回のUCLA戦は7時半キックオフでした。遅いですよね。理由はもちろんテレビ中継です。1試合のテレビ中継で私たちが得られる収入は、日本のそれとは比べ物にならない金額です。その辺の詳細はまた説明します。試合が終わって飛行機で地元に帰ってくるのが朝の3時半、試合のレビューのミーティングが8時から、その前にやらなきゃいけないことに約2時間半。……寝るのを諦めて、このブログを書いています。


オービックシーガルズも調子がいいようですね。こちらもまた、いいご報告ができるように、がんばります。

 

では。
TK

 

2010年09月14日

TOBY GERHART

更新が滞っておりました。申し訳ございません。 VISAのことでいろいろと苦労をしておりまして、8月のキャンプスタートにも間に合わず、酷暑の日本で精神的にしんどい日々を送っておりました。「仕事はあって、必要とされているのに、働くことを許されない」。こんなことがあっていいのでしょうか?あるんです、しょうがないんです。世の中には、どうにかなることと、どうにもならないことがあることを思い知らされました。特に今まで、「なんとかなってきた」ことが多かった私には、想像を絶するつらい日々でした。

 

かたちはどうあれ、幸運にも開幕に間にあうようにこちらに戻ってくることができました。仕事もこちらでのブログも遅れを取り戻すべく、直向に精進してまいります。

 

◇ ◇ ◇

 

さて、昨年、我がSTANFORD大学躍進のキーマンとなったTOBY GERHART選手。13試合で実に1800yd・27TDという驚異的な記録を残して、MINNESOTA VIKINGSに2位でドラフトされました。春のキャンプから評価が高かったTOBYが、先日バイキングスと4年契約を正式に結びました

 

1年あたり1億円弱の契約になります(わかりやすいように100円=$1と計算しています)。最近、NFLなどで多い契約の用語に「guaranteed money」というのがあります。これは、契約後の成績に関わらず、ギャランティーされる、保証される金額のこと。「signing bonus」とも言いますが、つまり、サインしただけでもらえるお金という意味です。極端な話、契約書にサインした次の日に選手生命が断たれるようなアクシデントがあったとしても、そのお金を受け取ることができます。TOBYの場合は、$1.939 million in guaranteed moneyとありますので、約2億円近いお金が保証されていることになります。

 

皆さんもご存じのメジャーリーグ。ここでは年俸3億円で契約すれば、次の日に解雇されても怪我をしても、2軍に落とされても、3億円がもらえます(例外を除いて)。しかし、NFLの契約は違います。様々なオプションの契約や、怪我をした際の条項等、年々複雑になっているそうです。背景には、労使交渉や、(野球に比べて)怪我のリスクが高いということがあるようです。そんな事情もあって、サイニング・ボーナスと呼ばれるお金ができたのでしょうね。

 

それにしても、契約の金額が桁外れです……。

 

ではまた。

TK