2008年05月15日
QB担当の新生コーチとQB#17村上選手が4月4~6日に行われた韓国ソウルでのQBクリニックに
講師として招聘されました。韓国でのクリニックの様子を新生コーチが連載レポート。
今回が最終回です!
※これまでのレポートはこちら↓
VOL.1~出発編~
VOL.2~ 韓国上陸編~
VOL.3~クリニック本番編~
新生コーチの「QBクリニックinソウル」レポートVOL.4 ~完結編~
●アメリカおそるべし?
4/6
8:00
前夜のたらふくの焼き肉と焼酎の飲まされ過ぎを経て迎えた2日目の朝。
「韓国料理はもういらん」モード。とは言え今日のクリニックを乗り切るためには、腹ごしらえは必要、
というわけで、ホテルの前の「ダンキンドーナツ」へ。
アメリカでアリーナフットボールにチャレンジしていた頃、南部のチームにいるときは
「クリスピークリームドーナツ」、北部のチームにいるときは「ダンキンドーナツ」がどこに行っても
必ずありまして、かなりお世話になっていました。
アメリカのファーストフードチェーンはかなりの勢いで韓国マーケットを浸食しているようで、
日本ではあまり見ることのない看板をあちこちで見ることが出来ます。
「韓国に来てアメリカを懐かしむ」という不思議な感じです(笑)。
韓国には日本語を流暢に操る人がたくさんいます。特に年配の人は上手。
また若い人は日本語は出来ないけどアメリカ語(英語)なら話せる、という人が多い。
戦争の勝ち負けがそのまま話せる外国語に反映されているわけですね(笑) 。
日本人としては「韓国人と日本人がアメリカ語でしか会話できない」ということが非常に悔しい感じ(苦笑)。
僕がハングルを勉強したらいいだけのことなのですが…。
ちなみに僕はアメリカでやっていたころのチームメイトに「なんでお前は英語を話せるんだ?」と
聞かれたときには、「お前らが第二次世界大戦で日本に勝ったからやんか」と答えていました(笑) 。
●クリニック2日目
10:00
クリニック2日目のプログラムがスタート。会場は地元の大学のグランドです。
この日は午後から南コーチ率いる社会人チーム・ソウルバイキングスの試合があるため、
12時半までのクリニックとなりました。6月に行うクリニックまでの間、各チームの毎回の
練習メニューに取り入れてもらえるように、まずは1日目にじっくり説明をしながらやった
トレーニングを30分程度にまとめて、ウォーミングアップとしてやっていきました。
1日目よりもコツを掴んでやれている選手が多かったようです。
ちゃんと継続してやってくれるといいのですが・・・。
その後、スローイングのドリル。こちらも1日目にやったことの反復です。
これまでの指導経験から、2日続けて同じことをやると、上達のスピードは格段に上がる、
というのが私の持論なのですが、今回もそういう選手がたくさんいました。
ちなみに昔の私にソックリのスン・ミン選手は2日目になってもちっともうまくなっていませんでした。
相当な不器用さです。こんなところも昔の私にソックリです。
6月には少しはマシになって登場してくれるとうれしいのですが。
▲スローイングの練習を指導。この選手はなかなか手強かった
後半は、実際に試合でパスを投げるときに使う「ドロップバック」というテクニックと、
ドロップバックからパスを投げるまでの練習をしました。
最後は、ドロップバックから2人のレシーバーに正しく投げ分けることができるかどうかを、
卒業検定のような形で一人ずつ順番にやってもらいました。
私と村上選手で「合格」「不合格」を判定し、合格するまでやり直し。
もっともだいぶ甘めの判定基準ですが…(笑) 。
中には一応パスは成功して「合格!」を出しても、自分のイメージ通りのボールではなかったからと、
自ら「もう一丁!」を志願する選手も。そういう自分により高いレベルを求める気持ちは大事ですね。
12:30
あっという間に2時間半の練習が終了。
最後の閉会セレモニーでは、2日間よく頑張った選手に対して、日本から持ってきたシーガルズの
グッズをプレゼント。たいしたものはなかったのですが、すごく喜んでくれました。
▲上達が著しかった選手を表彰し、ガッチリ握手
▲最後は全員で記念撮影!
●韓国でアメフトを発展させるには
15:00
クリニック終了後、お昼に冷麺をいただいて、バイキングスの試合を見学。
初めて韓国チーム同士の試合を見ました。残念ながら選手たちの実力だけでなく、
試合に取り組む姿勢も非常にレベルが低かったですね。
話を聞いたら練習も月に3回くらいしかやれていないそうです。
今年6月に日本のXリーグ2部のチームと試合をするそうで、試合後に戦術面でのアドバイスを
求められましたが、「正直に言って、月に3回の練習では、何をやっても大差ないし、
日本との差は広がることはあっても縮まることはないと思う」と率直な意見を言わせてもらいました。
日本にもプロリーグはありませんので、選手は日本一になっても一円も儲かりません。
平日は仕事をしながら、休日を割いて練習をしたり、平日の夜遅くにトレーニングをしたりしながら
頑張っています。
マイナースポーツとは言え、大きな試合になれば東京ドームのような大きなスタジアムで
何万人というお客さんの前で試合ができたり、多少はメディアも取り上げてくれたりします。
合コンでモテるネタにもなることでしょう(笑) 。
しかし同じアマチュアでも韓国のアメフト選手には、いわゆるヒノキ舞台がありません。
韓国選手権といっても大学の土のグラウンドで数百名のお客さんの前での試合だそうです。
メディアで取り上げられることもほとんどありません。
そんな環境の中で、「韓国一を目指して頑張ろう!」と言って、休日を割いてのハードな練習を
求めてもヤル気にならないということでしょう。
試合を見ながら、「どうしたらみんなもっと頑張ろうと思えるのかな」と考えていました。
試合をしている脇で、クリニックに参加した学生選手が、誰から言われる訳でもなく一生懸命に
ボールを投げる練習をしていました。「コイツらはちゃんと練習したら自分が上達できることを
実感できたから、頑張って練習してるんやんなー」と思いました。
そう考えるとやっぱり今回のようなクリニックは大事ですね。
韓国ではこれから数年間にわたって定期的にQBクリニックを開催していこうと考えているそうです。
微力ながらお手伝いしたいと思いますし、他のポジションでもぜひ行っていくべきですね。
そして選手だけでなくて、コーチも指導力を上げてもらって、
選手が育つ感動を味わってほしいと感じました。
シーガルズには現在は日本人コーチしかいませんが、初めて日本一になる過程では、
ヘッドコーチであったデビッドスタントをはじめとする多くのアメリカ人コーチから、本当に多くのことを
学びました。
昔は練習に対するモチベーションが低い選手の多いチームでしたが、いいコーチングを受ける環境が
できてきて、選手が「面白い!」と感じるようになって、チームが変わっていったと記憶しています。
あとは「ヒノキ舞台」ですが、これは代表チームの試合でしょうか。
去年はW杯に向けて日本人コーチを招聘して代表チームの練習をしていたようですが、
その期間はモチベーションの高い練習になっていたと聞きました。
例えば年に1回、代表チームが日本のチームとの試合を組んで、そこに向けて日本人や
アメリカ人のコーチを招聘して合宿練習を行うような形になれば、「強いチームを作るための練習」
「上達するための練習」のスタンダードが少しずつでも出来上がっていくのかもしれません。
実現に向けてはいろいろ障害もあるでしょうが・・・ 。
●ソウル最後の夜
18:00
かなりたいそう話になってしまいましたが、レポートの続きを…。
試合が終わって、韓国コーチ陣とともに夕食へ。今度は蟹をたらふくいただきました。
その後、銭湯へ。なぜか銭湯にウエイトトレーニングルームがありまして、
村上選手はベンチプレスをしていました(笑) 。
21:00
その後は屋台でトッポギを食べたり、お土産を物色しながら繁華街をぶらつき、さらに白コーチの
おススメの店でチヂミ(韓国風のお好み焼き)やチゲ(辛い鍋)をつまみながらマッコリを飲みました。
最後はカラオケボックスへ。韓国のカラオケはどこへ行っても日本語の歌がいっぱいあるようです。
同い年の白コーチのハイテンションに引っ張られるように深夜まで盛り上がりました。
ホテルに戻り、村上選手はまたもやそのまま撃沈…。着替えることもなく寝てしまったのでありました。
▲南コーチと大皿にいっぱい盛られたカニを頬張る
▲白コーチ。世界をまたにかけて海産物の取引をしています
●帰国
4/7
8:00
村上選手は朝食を食べられる状態ではなく一人で朝食へ。
しかし時間が中途半端でまたもやお粥にありつけず、結局ドーナッツプラントへ。
3日ともアメリカのドーナツチェーンでの朝飯という結果になりました(苦笑)。
今日も南コーチ、白コーチが迎えに来てくれて空港へ。
私が朝食に出ている間に、南コーチが早めにホテルに着いて、
村上選手にシーガルズがどんな風に練習をしているのか、熱心に話を聞いていたそうです。
前日に厳しい意見を正直に言いすぎて気分を害していないか、少し心配していたのですが、
前向きに捉えてくれていて少し安心しました。
11:30
空港となりのマーケットでお土産の食材などを買い、空港でチェックインの手続きを完了。
今回たいへんお世話になった2人のコーチにお礼を言い、再会を誓って別れました。
●最後に
6月のクリニックはソウルで4日間、釜山で2日間行うことになり、釜山のクリニックには
日本からオフェンスラインとディフェンスラインのコーチも招聘することも決まりました。
4月に出会った選手とまた一緒に練習できるのが今から楽しみです。
彼らの憧れや自慢であれるように、シーガルズをもっともっと強いチームにしたいですし、
いい指導ができるように、自分のコーチとしての技量も磨いていきたいと思っています。
また6月のクリニックもレポートさせていただく予定です。
短期集中連載の予定が、遅れ遅れになってしまいましたことをお許しください。
これからもシーガルズの応援をよろしくお願いいたします!
オービックシーガルズQBコーチ
新生剛士