TKこと河田 剛のUSA情報

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2010年02月

2010年02月22日

(アメリカでの)コーチという職業

日本の会社でも(よほど古い体質の会社でない限り)、会社に貢献するような

実績(業績)をあげた人は、昇給や昇進を含む処遇面での評価が得られるでしょう。
アメリカのフットボールコーチ業界でも、規模やシステムの違いはありますが、

それは同じことです。

 

特に、良い成績をあげたコーチには「すぐに」と言っても過言ではないぐらい、

次の仕事のオファーがきます。
日本で言えば、ヘッドハンティングのオファーがくることになるのでしょう。

 

身近な例を挙げると、昨年好成績だった我がSTANFORD大学のヘッドコーチである

JIM HARBAUGHには、NFLから2つ、カレッジ界から2つの大きなオファーがありました。
そのうちの一つは、総額で(年俸)3億円近くのオファーであったと推測されています。
彼は今後のことや家族のことを考え、すべてのオファーを断りましたが、
STANFORDを捨てて他のチームへ行くことも視野に入れての検討であったことは間違いありません。
アシスタントコーチたちへのオファーも多かったようです。

現に4人のコーチが他のカレッジに引き抜かれました。そのうち一人はヘッドコーチに、

二人はコーディネーターに就任しました。


USCを8年連続でPAC-10チャンピオンに導いたPETE CARROL氏の場合も、

NFLからのオファーを受けてSEATTLE SEAHAWKSのヘッドコーチに就任しましたね。
彼の場合は、NFLでの経験が長いため、毎年候補に挙がっていましたが、いつも断っていました。
彼はいつも「USCが好きだ!」というのを理由に断っていましたが、今年は断りきれなかったようです。
勝手な詮索ですが、その理由にはずばりお金があると思います。
彼は2年前にUSCと新たな契約を結びました。年俸約5億円という、カレッジ界ではあり得ない

破格の契約で話題になりましたが、今回のシアトルからのオファーは6億とも7億とも言われています。

アメリカでのフットボールコーチのこのような動きをひと言で表すならば、

「マネーゲーム」と言えると思います。


たとえ、複数年契約の途中であっても、
たとえ、選手やスタッフやファンに後ろ指を指されようとも、
たとえ、上司にあたるコーチや同僚に対する裏切り行為であったとしても、
すべてはこのひと言で片付けられてしまいます。
    「ビジネスだからね!」

 

こんな話があります。
ある大学のヘッドコーチが、喉から手が出るほどほしい高校生の選手とその両親を

数人集めて、熱弁をふるいました。
「俺たちには君たちが必要だ! 我々が全米チャンピオンになるためには、

どうしても君たちの力添えが必要だ!」
そう言った2日前に、他のメジャーカレッジからのオファーを快諾していたそうです。
そして数日後、記者会見で他の学校へ移ることを発表したのです。
私はこの話を聞いて、その根性とプロセスにどうしても納得いかず、周囲に聞きまわりました。
「アメリカではこんなのありなのか!」
1件だけが(百歩譲って)私寄りの答え「ああいう奴とは一緒に仕事をしたくないね!」、
残りの8件は「ビジネスだからしょうがない……」。


そうか。ビジネスだから、義理や人情はいらないのか……。

なんだか、なんともいえない悲しい気持ちになりました。
私は日本人ですので、そのような場面に遭遇したなら、義理や人情を大事にしたいです。
と思う反面、早く「ビジネスだからね!」と言ってもおかしくないようなコーチになりたいと思う
今日この頃であります。

 

TK

 

スーパーボウル

遅ればせながら……

いやー、いい試合でした。本当に楽しめる内容でしたね。
お互いの長所が多く出た試合ではなかったでしょうか。

 

ところで、私はこの試合を違う観点から見ていました。
それは、試合の前にあるコーチが言っていたことを思い出したからです。
  「実力が均衡しているチームが同士が対戦するとき、

     その勝敗を分けるのはスペシャルチームである!」
おっしゃる通りだと思います。

 

そんな観点で見ていたからかもしれませんが……
・SAINTSは、40ヤード以上のフィールドゴールを3本(COLTSは1度失敗)。
・SAINTSは、(1回)パントを敵陣の5ヤード以内に落とした。
・SAINTSは後半開始のキックオフでオンサイドキックを敢行、攻撃権を得た。
以上のようなことが、勝因の一つとして挙げられるでしょう。

 

フットボールには、大きく分けて3つのカテゴリーでの勝負があります。
オフェンス・ディフェンス・スペシャルチームです。
実力が均衡しているので、3つの勝負のうちオフェンス・ディフェンスを1勝1敗で

終わるとするならば、残っているのはスペシャルチームです。
しかし、NFLではあまりスペシャルチームの練習に時間を使いません。
限られた時間の中で、いかに密度の濃い、精度の高い準備(練習)をできたのかが、
勝敗を分けたのではないでしょうか??


来年は、どのような戦いが繰り広げられるか楽しみですね。

世界で一番実力が均衡しているフットボールの試合であるはずのスーパーボウルですから、
来年もスペシャルチームが勝敗を分けることになるのではないでしょうか。

 

ではまた。

TK

 

2010年02月15日

WEST COAST オフェンス

スーパボウルに向けての戦いを見ていて気づいたことがあります。

 

ベスト4(カンファレンス・チャンピオンシップ)に残った4チームのうち3チームが、
掲題のウエストコーストオフェンスがベースのオフェンスシステムを採用しています。
別になにかの資料を見たわけではないですが、COLTS以外のVIKINGS、JETS、SAINTSが、
そんな感じのオフェンスをしていました。

 

なぜ、わかるのか? 自分たちのベースもウエストコーストだからです。

 

たまに現地の放送で練習風景や各チームの特集等を目にした際に、
プレイコールがまったく同じだったりするのを見て確信しました。
現在、NFLの多くのチームがこのウエストコーストオフェンスを採用しています。
ご存知の方も多いと思いますが、元STANFORD大学&SAN FRANCISCO 49ERSの
ヘッドコーチであるBILL WALSH氏が始めた(創めた)とされるオフェンスシステムとして、
(フットボール界では)あまりにも有名です。

 

簡単に説明すると……
短いパスを多用して、フィールドを縦にも横にも広く使うオフェンス-とでも説明しておきましょう。
ランというよりもパスコースとプロテクションのことをセットでそう呼んでいると理解しています。
実際にプレイやパスルートの名前もまったく同じのまま現存して使用されています。

 

このウエストコーストオフェンス。プレイコールが長いんです。
チームによっては、それに番号をふってしまって、数字だけのところも多いんですが、
STANFORD大学を含む多くのチームが昔のままのシステムを踏襲しています。
例えば、こんな感じです。
「STRONG RIGHT SLOT F RT PASS 96 COUNTER X BULL DOG Y DEEP CROSS」
もっとも特徴的なのは、パスコースをできるだけそのまま伝えることです。
このプレイの場合、2人がパスコースへでるため、その2人にそれぞれコースを指示しています。
STANFORD大学では、それにQBがチョイスできる2つ目3つ目のプレイを
同時に入れたりすることもあるので、とんでもない長さのプレイコールができあがります。
「WEST RIGHT SLOT U COUNTER 96 CROSS BOSS KILL 2JET ALLEY HB

BALOON ALERT U LT 95 WEAK ON 1 ON 1 READY」
と、まぁこんな感じです。
やっぱりフットボールは、賢い人じゃないと厳しいですね……。
 
プレイオフでは、同じオフェンスシステムを持ったチームの対決もありましたね。
まだゆっくりビデオを見てないので、そんな観点から見てみようと思っています。
楽しみです。
 
しかし、日本は寒い……。