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【5.18ドイツ遠征5】ドイツのクラブ運営に学ぶ

2013年04月30日

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インターナショナル・チャレンジボウルⅡ(International Challenge Bowl Ⅱ)

5/18(土)19:00キックオフ [日本時間 5/19(日)2:00]
vs. デュッセルドルフ パンサー(Duesseldorf Panther)  HP Facebook
@パウル・ヤネス・スタジアム(Paul-Janes-Stadion/デュッセルドルフ) Google MAP

 

<ライブ中継について>

試合の模様はインターネットでライブ配信されますが、ヨーロッパ圏外からは視聴できません。また、権利の関係で独自に配信することもできません。現地からTwitter、Facebookで試合経過や結果を発信する予定ですので、どうぞそちらをご覧ください。


 

(冨樫AGMレポートVol.3)

 

2013ドイツ遠征特集(バックナンバー集)

(参考資料)「THE OBIC SEAGULLS 2013」(English/PDF)

(昨年)2012ドイツ遠征特集(バックナンバー集)

 

 

 

“部活”がない社会

 

初回レポートの中、デュッセルドルフ パンサーの育成プログラムについての箇所で触れましたが、ドイツには、いわゆる学校の部活動というものがありません。よって、放課後の使い方は学生、生徒個人に委ねられ、各人が好きなスポーツや趣味に時間を使うことができます。

 

そこで、地域密着の「クラブ」というものが、部活動の代わりにスポーツ活動や文化活動を行う場となっているのです。また、それだけでなく、老若男女、様々なジェネレーションの交流の場、あるいは青少年の社会勉強の場として、クラブが非常に重要な役割を担っています。現在、日本の文部科学省が推進している「総合型地域スポーツクラブ」は、ドイツのクラブがロールモデルとなっています。

 

ドイツ社会では、すべての分野、趣味、スポーツに、クラブというものが存在します。スポーツでは、サッカー、バスケ、バレーボール、テニス、マラソン、陸上などなど。文化面でも、音楽、美術ほか、ほぼすべての分野にクラブがあります。犬好きが集まればドッククラブ、馬好きが集まれば馬クラブ、映画好きが集まれば映画クラブといった具合です。Japan Clubのように、日本人コミュニティの交流の場となる組織もあります。

 

 

クラブ文化が生む好循環


対戦相手のデュッセルドルフ パンサーもそんなクラブのひとつです。アメリカンフットボールを通しての社会貢献、それが彼らの基本理念になっています。


クラブの会員は約500名。ユースチーム、2NDチーム、1stチーム、チアチームに分かれ、コーチや指導者の大半はクラブのOB/OG、父兄で構成されています。OB/OGが下の世代を指導し、指導された世代がさらに下の世代を教育します。いつしか選手に家族が増えたときには、その子どもをクラブに入れる、というような循環があります。皆、自分を育てたクラブに感謝し、何らかの形で恩返しできないかと考えるのが、ごく当たり前のようです。こうして何世代にもわたって関わり続けることが、クラブの歴史、伝統となり、ブランドをつくりあげていくのです。

 

スポンサーとの関係もそうです。クラブの活動に賛同する地元のスポンサー企業がチームを支えています(パンサーのスポンサー企業)。昨年戦ったドレスデン モナークスと同じように、パンサーもまた「おらが町のフットボールチーム」です。その協力の仕方は現金支給であったり、物品やサービスの提供であったりと様々ですが、業種別に確立されていて、宿泊を提供するホテル、ビールやパーティー会場などをサポートするビール会社、遠征時のバスや普段のトランスポーテーションを提供する旅行会社など、効率よくクラブ活動が支えられています。

 

では、なぜ地元のスポンサーがサポートするのか。パンサーのリーグ戦の平均観客動員数は1,500~2,000名。熱狂的ファンが2,000名くらいいるそうです。そういったファンは、大好きなパンサーを応援している企業なら信頼がおける、自分の息子が通っているクラブチームをサポートしている企業はいい企業だと受け止めるのです。たとえば、パンサーのランドリー会社は選手のユニフォームを無料で洗濯します。そうすると、ファンもその会社に頼みます。クラブの所属メンバーも頼みます。そういう具合に、地元企業にとっては、大勢のファンやクラブメンバーが顧客となり得るわけで、パンサーへの支援を断るわけにはいきません。また、スポンサー企業は選手の雇用の場でもあります。選手が仕事でも実績をあげてスポンサーに貢献する。そうすると、スポンサーはクラブをもっと応援したくなる。そんな好循環がチームをいい方向に導いています。

 

地元自治体もクラブチームを上手く支えています。施設面では、クラブに対して格安の使用料で多目的ジムやフィールドを貸し出しています。前回訪れたドレスデンでは、いくつかのクラブが共同で市の施設を年間を通じて借りている例をご紹介しましたが、デュッセルドルフも同様でした。公立の学校個々に大きな体育館や施設をつくるのではなく、市営の体育館やグラウンドをつくり、そこに小学生や中学生が体育をしにやってくるようです。使い勝手は別として、日本のように、あまり活用されない自治体の施設がたくさんあり、維持するためだけに多くの税金が使われているのに比べれば、ずっと効率的かもしれません。  

 

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▲【左】総合型スポーツクラブで行われていた子どもの運動教室 【右】共同で利用する市営複合施設。トラックの他、フリーフィールド、テニスコート、ウエイトルームがありました

 

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デュッセルドルフ日本人学校。ドイツでは珍しい、校庭がある小学校です。5/18(土)の試合の前日に、チーム全員で訪問し、特別授業をさせていただく予定です


 


いよいよ習志野で実践

 

Xリーグはどうかと言えば、それぞれのチームがそれぞれの方法でグラウンドを確保し、練習しています。幸い我々には専有のグラウンドがありますが、X2やX3のほとんどのチームは、練習場所が定まらず苦労されています。自治体のグラウンドを上手く利用しているのは、アサヒビールシルバースター(川崎球場)だけでしょう。他は、企業や大学のグラウンドをシェアするなど、練習場所を確保するだけでもたいへん難しい状況です。

 

少し話は大きくなりますが、日本の運動する現場、学校の部活動やクラブチームに目を向けてみると、運動する環境があまりにも限定され過ぎています。たとえば、毎年開催されている国体のために新設される体育館やグラウンドを、その後、どのくらい一般の方が利用できているでしょうか。月に数回しか使われない天然芝にどれほどの維持費が税金から支払われているでしょうか。また、国公立の大学、高校、中学校、小学校の施設が一般に開放されるには様々な制約があり、セキュリティの面でも非常に厳しいルールがあります。こういったことを挙げたらきりがありませんが、これが日本の現状なのです。

 

この2年、ドイツのクラブチームとの交流を通して、今の日本では、ハードの整備よりも、様々な人々が運動や体を動かすことに簡単にアクセスできる仕組みや、部活動やクラブチームに施設や活動の場を上手く割り当てて切り盛りする人材を育成することが急務だと強く感じています。


オービックシーガルズでは、現在、地元習志野市を中心とした地域の皆さんに、行政と一体となって幅広いスポーツへの参加機会や場を提供することを目指して、習志野オービックシーガルズスポーツクラブ(仮)設立の準備を進めています。自分たちにできることから始め、地域社会に貢献できるクラブチームのあり方を追求していきたいと考えています。