2012年04月13日
[3月に現地を視察した冨樫アシスタントGMのレポートをシリーズでお届けしています]
●ドレスデン モナークスの心臓 ヨーグ・ドレスラー(Jörg Dressler)ジェネラルマネージャー
ヨーグ・ドレスラー、モナークスのジェネラルマネージャー(GM)。ドイツでのGMの定義はアメリカ的な定義と少し異なります。アメリカではGMがチームのほとんどの権限を有し、チーム強化、チーム経営、トレードや年俸の交渉、観客動員の戦略など、様々な場面で最終決定を行う人物とされますが、ドイツではすべてを管理、調整する管理責任者のようです。そもそもGM制度の概念がないのかもしれません。
大きな違いは「現場に介入するか否か」という点ですが、「現場はすべてヘッドコーチに委ねる」、それが彼のスタンスで、そういう部分ではオービックシーガルズと同じだと言えるかもしれません。
スポンサーとの調整、外国人選手の獲得の手続き、ゲームマッチングから、ヘルメットやユニフォームの選定、練習場所の確保など、彼の役割は幅広く、ほぼすべてのことに関わっています。まさにチームを動かす心臓のような存在です。しかし、練習の内容や試合運び、コンディショニング、現場には一切関わりません。現場には現場の事情があることを彼は知っているのです。
●ヨーグGMからみたオービックシーガルズ
German-Japan Bowl(2010年)のインパクトが強く、当時の日本代表選手がスターターにいるオービックシーガルズもきっと強いに違いないと思っています。また、フットボールの組織がアメリカナイズされていると認識しています。デイビット・スタントがシーガルズのヘッドコーチだった頃、NCAAのカレッジのようにチームのベースを作ったことが大きく影響しているのかもしれません。
また、シーガルズの選手はプレースピードが最大の武器だと捉えられています。プレーテンポというより、一つひとつの動作やリアクションが速いということでした。
●私の目から見たドレスデン モナークス
もっとも強く感じたのが、「Discipline(規律)」。ハドルの集散や練習場所の移動、コーチの指示への反応など、いたるところで統率がとれたチームだと感じました。ドレスコードもしっかりしていますし、クラブハウスの中も整理整頓されています。
また、彼らは日本人フットボーラ―をたいへんリスペクトしてくれています。ヨーロッパ選手と比較して決して大きくない日本人選手が、世界選手権や国際親善試合でヨーロッパのチームを倒す姿は、まさしく“SAMURAI”だと、誰もが褒め称えてくれます。
ヨーグGMからチームの皆さんに紹介していただきましたが、その挨拶や人を招く感じはオービックシーガルズの雰囲気にとても似ていて、大いに親近感が沸きました。日本人とドイツ人は基本的な国民性が似ていると言われますが、なるほどと感じる場面が多かったです。
●ドレスデン モナークスの葛藤
ヨーグGMいわく、「モナークスにはいい意味で突き抜けた選手がいない」と。良い意味でも悪い意味でも、みんなまじめで誰もさぼったりしません。フットボーラーとしてファイティング・スピリットをもっと表現してほしい、やるかやられるかの瞬間に本能的に相手を倒す-この気持ちがチームには必要だと熱く語ってくれました。とても共感できます。
昨シーズンから今シーズンにかけてのオフ期間中のトレーニングでは、週1回、ボクシングのトレーニングを取り入れて、定期的にオフェンス対ディフェンスのボクシングマッチも試したそうです。いかにチーム内での競争を生むかがこれからのカギだと、チーム内競争できるような仕掛けをコーチがしているということでした。スキルをチームに浸透させるよりも、こういった風土や精神的な部分を浸透させるのは本当に難しいと実感しました。
▲(左)ヨーグGMの仕事風景、
(右)モナークスのエクイップメントルーム。ヘルメットのメンテナンス中
▲ユースチームのロッカールーム