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走る理由 27歳-杉原雅俊
2009年04月27日
昨年末解散したオンワードオークスから移籍してきた杉原。
春先、走り中心の練習で常に先頭を走っていた。
競争相手がいない中、彼は何を見て走っているのか-。
それを確かめたくて、話を聞いてみた。
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昨シーズンはリターナーでオールXリーグに選出。これから日本を代表する選手へと成長していくであろう、順風満帆な選手生活に突然降ってきた所属チームの廃部。 愛着のあるチームに残るか、自身の成長をとるか。悩まないわけがない。
2月のオービックシーガルズ恒例の走りもの練習。今季も吉永トレーナーが厳しいメニューを作ってくれた。いつもと同じ厳しい練習に、楽しく激しく取り組む選手たち。そして常にその先頭を走るのが、杉原だった。
「実は走りものは好きじゃない。前のチームでは一発屋と言われてましたし。
1本目は速いけど、2本目からは全然ダメ……」
しかし、何本走っても杉原は1番手を譲らない。それに触発されてか、古谷(拓)、
清水が後を追う。自然とチーム内に競争が生まれてくる。
「古谷さんがいるからオービックシーガルズに来ました。
日本のエースRBを抜いて日本一のRBになって、日本一のチームになる」
2007年のワールドカップ。
日本代表の選考に名を連ねた杉原は、その練習でもアピールしていた。
コーチを捕まえ貪欲に教えを請い、練習が終わっても最後まで残っていた。
向上心の強い選手という印象が残っている。だからこそ、今回の移籍の理由を聞いた
ときに納得した。
「今、とても楽しいんです。今まで自分でも知らなかった能力が開発されているのを
実感しているし、これからオレ、どうなっていくんだろうと考えると楽しい。
自分には走ることしか能がない。それが分かっているから、走ることだけは
誰にも譲らないって気持ちで走ってます」
主将の古庄さえも、杉原の運動能力に一目を置く。「杉原が入ったことでチームに新しい
競争が生まれた。オービックシーガルズにとっても、杉原にとってもいい移籍だと思う」(古庄)
もうひとつ、彼にはここで走る理由がある。
それは「相模原ライズ」(*)の元チームメートへの想いだ。
(*相模原ライズ:オンワードが解散後、在籍選手を中心に立ち上げた新チーム。
今季X3からスタート、早ければ2年後にX1に昇格の可能性がある)
「お世話になったチームだし、愛着もある。いろいろな人に必要とされ、とてもうれしかった。
だからこそ、今回の決断を応援してもらえるように、ここで結果を残さなければならない。
オービックに行ってダメになったとは絶対に言われたくない。そして3年後のシーズン、
同じフィールドで彼らと戦うときには、徹底的に叩きのめしてやりたい」
「叩きのめしてやりたい」-この言葉だけを拾ったら、「なんて奴だ」と思われるかもしれない。
でも、このインタビューを相模原ライズの元チームメートが読んだら、きっと、少し笑って
「あいつにだけは負けない」と思うだろう。お互い、再会を心から楽しみにしているのは、
間違いない。
プライドも捨て、泥にまみれ、素直に教えを請い、できないことをむしろ楽しんで取り組んでいる。
すべてが自分の成長への糧となることを知っているから。
今、オービックシーガルズにいる理由が、杉原の成長を加速させている。
背番号21が5月5日にフィールドを所狭しと走り回る光景が目に浮かぶ。
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RB#21 杉原雅俊(すぎはらまさとし) /175cm、80kg、27歳。昨シーズンまでオンワードオークスに所属。日本屈指のスピードを誇るRB兼RET(リターナー)。2008シーズンはキックオフリターンで平均38.2ヤード、2TDと驚異的な走りをみせ、オールXリーグに選出された。犬のような走りをすることからニックネームは「ジョン」。RB#20古谷拓也、RET#83清水とのチーム内でのエース争いも必至。即戦力としての活躍が期待される。 |