玉ノ井康昌コーチブログ“LOCK ON PLAYER”

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自分のオフェンス 松本喬行

2009年11月17日

3年目にして副将、オフェンスリーダー。さらに今シーズンは、OL(オフェンスライン)だけでなく、

TE(タイトエンド)としても活躍を見せるOL#50松本喬行(たかゆき)(TEでは#87)。

今シーズンの様々な変化を彼はどう受け入れているのか。そしてオフェンスリーダーとして

セカンド・ステージにどう臨むのかを聞いてみた。

 

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環境の変化

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tama0911171.jpg 「オフェンスリーダーの話をいただいたとき、正直自信がなかった」

 

まだ3年目。錚々たるメンバーが揃うオフェンスを、リーダーとして牽引するのは恐れ多いと感じたという。しかし、その話を受けてからの行動に迷いはなかった。

 

「この2年間はおとなしくチームに関わっていた。チームに自分をどう合わせたらいいのか模索しながら、所属している感じだった。本当の自分を出していないというか……。だから、この機会を前向きに受け入れて、回りを気にせず自分の信じたことを行動に移すことにした」

 

今ではその言動から「将軍」というあだ名がつくようになった。「将軍」と呼ばれる背景には

どんなことがあったのだろうか。

 

 

若手をリーダーに

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tama0911172.jpg 松本がまず取り組んだことは、コミュニケーションの活性化だった。

 

「コーチ主体にならず、選手とコーチのコミュニケーションを増やすことを心がけた。コーチと選手がお互いの意見を出し合ってオフェンスを創っていくこと、そういうオフェンスにしたいとオフェンス全員に話した」

 

シーズンが始まる前、新生オフェンスコーディネーターと「どうやってオフェンスを変えていこうか」とことん話をし、若手が主体的に関われる環境を整備した。この2年間、松本自身が「受け身」だったからこそ、若手が自分を出せる場を創ったのではないだろうか。


「実際にやったことは、若手を中心にポジションリーダーを指名したこと。しんさん(OL#68河村)

リーダーにしたら、すごくオフェンスがポジティブになった。しんさんも自覚してくれてたと思う。

しみけんさん(WR#83清水)も自分と同じ認識でチームを牽引してくれて、阿南(WR#26)

やまちゃん(RB#35山﨑)もリーダーシップを発揮してくれた。拓也さん(RB#20古谷)

白木さん(RB#36)は何も言わなくても主体的に関わってくれる。春は月に数回、リーダー

ミーティングをして、各ポジションの現状やオフェンスをどうしていこうかを一緒に考えた」

 

OLの中心人物でもある工藤(OL#74)も、今シーズンのオフェンスは「雰囲気がいい」と言う。

3年目の松本が発信し行動することで、「自分も言っていいんだ」と思えた若手が増えたのでは

ないだろうか。自分の考えや思っていることを発信しやすい場を創ったからこそ、工藤のような

言葉が出るのだろう。

 

もうひとつ、松本が意識をして取り組んだことがある。「ツイスターズ(OLの愛称)がオフェンスを

引っ張る」と常に言い続けたことだ。

 

「自分はOLだから、特にツイスターズを中心にオフェンスを創りたくて、言いたくないことも

ツイスターズには言ってきた。ディフェンスに比べてオフェンスは受け身に見られがちなことも

嫌だった。攻撃的なオフェンスを創りたかった」

 

練習中、ハドルブレークが弱いとき、松本がツイスターズに罵声を浴びせるシーンが何度かあった。

それは松本の強い思いであり、譲れない部分だったのだろう。ツイスターズにあれだけ厳しく言える

人間は、松本以外にいない。ツイスターズの信頼関係が固いからこそ、なしえることだろう。

 

「今シーズンのオフェンスは、自分のオフェンスだと思っている。中途半端なことをする選手がいたら、

迷いなく殴れる覚悟はできている」

 

 

セカンド・ステージに向けて

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tama0911173.jpg  セカンド・ステージについては「特別なことをしようとは考えていない」、そう切り出す。とはいえ、春に自分たちでオフェンスを創っていくと決めてから、まだ結果が出ていない。

 

「今シーズンのオフェンスのスローガンは『MAX TENPO』。何があってもそこに立ち返る、ということを春の練習からずっと意識してやってきた。自分たちが春から掲げたものを継続して形にできていると実感できるのはこの3年間で初めてで、そこには自信をもっていい。一方、ファースト・ステージで露呈した準備不足や決定力不足の原因は分かっているので、そこを自信に変えることも、この3週間でできたと思っている」

 

「自分たちのフットボールを楽しくやろうよ」というKJ(DL#11ジャクソン)の話が印象に残っていると話す。

 

「そういう感覚でプレーできるのが社会人の醍醐味だと思う。自分たちがやってきたことを信じて、

もっともっとレベルアップさせる。自分たちの一番楽しいフットボールをIBM、パナソニック電工に

ぶつける。自分たちのオフェンスをやりきるだけ。それを楽しみたい」

 

3年目にして初めて自分のオフェンスで勝負する。率いる若き将軍の真価も問われる。

 

 ⇒松本選手のプロフィール

 

 

環境が人を変えるというが、マツもその言葉に当てはまるのかもしれない。しかし、大学時代に主将を務めたポテンシャルは誰もが感じていた。マツがリーダーになったことで、オフェンスに新しい風が吹いている。この取り組みが正しかったことを証明するためにも、セカンド・ステージ2試合は負けられない。オフェンスは、そしてオービックシーガルズは、プライドをかけて勝負に挑む。